今回のサイエンスアドベンチャーの舞台は日本平動物園。レッサーパンダやホッキョクグマなど動物のことを学びながら、私たちの未来を考えます。
講師は、帝京科学大学の佐渡友陽一 (さどとも よういち)先生です。
本日の学習について、佐渡友先生から教えていただきました。動物園をSDGsの観点で見ていきます。
なお、ここからの説明については、佐渡友先生の資料を元に作成させていただきました。詳細は、一番下のPDFをご参照ください。
ホッキョクグマの体は、氷の上でアザラシを捕ることに適しています。しかし、魚を捕まえるほど早くは泳げないし、シカを捕まえられるほど早く走ることはできません。その結果、氷の張る冬の期間にたっぷりアザラシを食べておき、氷のない夏は飢えをしのぐ生活になります。だから、地球温暖化で氷のない時期が増えると、餓死してしまうホッキョクグマが増えるのです。
野生のアムールトラは、残り400~500頭と言われています。トラ全体でも5000頭くらいしかいません。トラは8亜種に分けられるが、このうち3亜種(バリトラ、ジャワトラ、カスピトラ)は絶滅してしまいました。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種は、動物だけで1万6000種、植物も合わせると4万種以上です。ホッキョクグマ、アムールトラ、オランウータン、フンボルトペンギン、レッサーパンダの他、アジアゾウ、チンパンジーなどが含まれます。
オランウータンの暮らす森が、パーム畑になっています。
パーム油は、ポテトチップスやチョコレートなどの食べ物のほか、石けんや洗剤など幅広く使われています。植物油の中で、世界で一番多く作られているのがパーム油なのです。パーム油が無くなると、日本で暮らす私たちが困るだけでなく、現地でパーム油を作る仕事をしている人達も困ります。そして、植物油は私たち人間が暮らしていくために大切なのですが、同じ面積で一番たくさん作れるのがパーム油なので、パーム油がなくなると世界中の人が困ることになるのです。
ニホンイシガメは大きくても甲長22cm。なお、これはメスの大きさで、オスは甲長15cm。
ミシシッピアカミミガメは甲長28cm。性格は「攻撃的でかみつく」。噛み付く力は強く、ニホンイシガメの甲羅を噛み砕くこともあるのです。ミシシッピアカミミガメはペットとして大量に輸入されたが、寿命が長いので飼いきれなくなって放されたりして野生化しました。その結果、日本でどんどん増えて、ニホンイシガメの生息地を奪ってしまうことになっています。
<参考>
ペンギンのような海にすむ生き物たちのお腹からプラスチックが出ています。
プラスチックは分解しないので、海を漂いながら、バラバラになります。海の生き物たちは、このようなプラスチックを、プランクトンやクラゲと一緒に食べてしまうことがあるのです。
プラスチックは消化できないので、ウミガメやクジラの胃や腸を詰まらせてしまうことがあります。こうなると、それ以上何も食べられなくなってしまうので、餓死してしまうことがあるのです。
プラスチックの問題は、分解しないことと、石油から作られていることが挙げられます。そこで最近では、自然界で分解する「生分解性プラスチック」や、植物などから作る「バイオマスプラスチック」が開発されています。しかし、私たちの身の回りにあるのは、石油からできた分解しにくいプラスチックが多いので、きちんとゴミ箱に捨てることも、とても大切です。
日本平動物園のレッサーパンダ館には、屋外運動場が2つ、屋内運動場が1つ、さらに屋内展示室が1つあり、さらに向かい側の繁殖棟にも複数の飼育場所があります。たくさんのレッサーパンダを飼育できるようにしているのは、レッサーパンダの繁殖をスムーズに行なうために大切です。例えば、高齢個体にゆっくり過ごしてもらったり、若いオスとメスのお見合いを行なうなど、さまざまな取り組みができるからです。
日本平動物園ではレッサーパンダの種別調整(種別計画管理)を担当しています。具体的には、全国の動物園で生まれたレッサーパンダの「血統登録」を行なったり、繁殖計画を立てたりするのが仕事です。全国の動物園水族館が、動物ごとの種別調整事業を分担しています。このような取り組みは世界レベルでも行なわれていて、レッサーパンダの場合、日本平動物園が作成した血統登録台帳は、オランダの国際血統登録担当者に送ります。
レッサーパンダは、英語では通常「レッドパンダ」と呼ばれます。レッドパンダ・ネットワークは、レッサーパンダの生息地を保全するために「森の管理人プログラム」などの取り組みを行なっています。日本平動物園では、レッドパンダ・ネットワークの活動を支援するための寄付を集めて送っています。
現在、地球上の様々な動物が、それぞれの事情でピンチな状態にあります。動物を守るための取り組みも行なわれています。ぜひ、みなさんも「自分にできること」を考え、普段の生活の中で取り組んでいきましょう。
佐渡友先生、学びの場を提供いただいた日本平動物園の皆様、本当にありがとうございました。